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【菅代表インタビューvol.2・MNHフェンシングクラブの成り立ち】

2024.09/03

次に、2015年から運営している当クラブのはじまりについて、お話したいと思います。

まずクラブ名にある「MNH」。これは当クラブの親会社です。
実は「みんなで(=M)日本を(=N)ハッピーに(=H)」という意味なのです。

簡単にいうと、次世代が幸せになる日本や地域の活性化に向け、もの作りをしている会社(*)です。特徴的なのは、多くのパートナー(みんなで=M)と連携して事業を進めていることです。私はこのMNHという会社の会長でありながら、若い頃からフェンシングを楽しんできたフェンサーの1人でもあります。

ただし、当クラブを作る以前は、仕事としてフェンシングに取り組む気はありませんでした。というのも、仕事(もの作り)とプライベート(フェンシング)はまったく別物という認識でいたからです。

もの作りとは、何かいい商品を世に送り出せば、たとえ価値観の違う人でも「こんなものが欲しかった」と喜んでくれるもの。すなわち「みんなで日本をハッピーに」を実現するために多くの人を結びつけられる、ベストな手段だと捉えていました。

しかし次第に、もの作りだけでなくてもそれが実現できることに、気づいてきたのです。ちょうど2015年頃のMNHは「プロバスケットボールチームをもの作りで応援する」というような提案も受けており、スポーツともの作りの関わりにも注目し始めていました。

スポーツの良さは、何よりも人々が「一体感」を得られることでしょう。老若男女が1つのチームを応援する、日本チームにエールを送る、というのが良い例です。多様な人々をいとも簡単に惹きつけ、瞬時に結びつけてしまうのが、スポーツの最大の価値です。

これは「みんなで日本をハッピーに」を実現する有力なコンテンツになり得るのではないか。そう思い立ったのでした。


部活動だけでは次世代につなげられない


2014年の11月。

何のスポーツにするかと考えた時に、自分がやってきた「フェンシング」しか頭にありませんでした。ちょうど調布の4階建てビルにMNHの事務所を移転するタイミングだったこともあり、そのビル内にフェンシング場をつくることにしたのです。

この当時フェンシングと言えば、企業内スポーツや公共の場を借りて細々とやっている人がほとんど。つまり競技人口が少ないフェンシングは、商売にはならないとされていました。

一方で、フェンシングは「部活動」でそれなりに取り組まれてはいました。しかし、フェンシングというスポーツを次の世代へとつないでいくという観点では、課題も多いと考えていました。

そもそも部活動は、学校の先生や先輩が無報酬で指導にあたることで成り立っています。そのため、指導者がフェンシングに関するキャリアを築けず、結果フェンシング人口が増えることがない。すなわち限定的で継続性がないのです。

私たちの理念・「日本をハッピーにする」ために、スポーツの価値を最大限活かしたい。多様な人がフェンシングを楽しめる場であり、コーチやスタッフなど関わる人みんなが継続的に対価を得てキャリアを築ける場。それを本気で作りたいと考えたのです。

つまり、マイナーなスポーツでありながらも、民間組織として継続的に運営できる仕組みを作りたい。
それが一番最初の目標でした。




勝つことだけが目的ではない


私は、過去に国際大会の参加を通じて、ハンガリーのスポーツクラブなどを視察する機会がありました。それもあり、欧米の状況と比較して、日本のスポーツクラブの在りかたに強い疑問を抱いてきました。

残念ながら、日本のスポーツクラブは部活動の延長線が多いのです。

つまり「先生と生徒」という師弟関係を引きずっているパターンが多い。

コーチは自分の技量を伝えることだけに終始し、その目的は生徒が「勝つこと」のみ。
生徒が大きな大会で優勝したり、オリンピック選手になったりすることで、コーチとしての価値があがる。言語化しないまでも、そのような傾向が多く見られます。

すると、どうなるでしょうか。

勝てない子・強くない子は次第に落ちこぼれていってしまう可能性もあります。勝てない自分に価値を見出せず、最悪の場合、スポーツが嫌いになってしまうでしょう。スポーツが好きで始めたのに、「二度とやりたくない」と辞めてしまう…。こんな不幸なことはありません。

誤解のないようにいうと、部活動を否定している訳ではありません。民間クラブの役割は部活のそれとはまったく別物ではないか、とお伝えしたいのです。つまり、スポーツの価値を次世代につなげていくためには、日本のスポーツクラブのあり方を、根本から変える必要があると考えていたのです。

以上のことから、私は当クラブのコーチの意識改革にもっとも力を入れてきました。

私たちは会員の方からお金をいただいています。その方々にきちんとした価値を提供するにはどうすれば良いのか。まず、当然ながら、お金を払っている方が「主人公」になるべきです。

会員がスポーツに取り組むのには、さまざまな目的があっていいはずです。
試合を例にとっても、その目的は勝つことオンリーではありません。多くの人と対戦することや、試合に出ることによって得られる経験もあるでしょう。大人の方だったら、そのニーズに一層幅があると思います。健康維持はもとより、ストレス発散や息抜き、友だちづくりという方もいるかもしれません。


そのように、勝つこと以上に大切なものは、「スポーツをやっていて本当に楽しい」と心から感じることではないでしょうか。それでこそ、スポーツ本来の価値が発揮されると思うのです。

もちろん勝ちたい方には、その実現を精一杯応援したいと考えています。

しかしそれが唯一の価値ではない、と。

私たちはそう信じています。


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(*)MNHは、引きこもり経験者や障がいがある人の働く場をつくりながらもの作りを行っている。さまざまな社会課題をビジネスで解決し(ソーシャルビジネス)、喜びのある「働く」を実現すること(みんなで日本をハッピーに)をめざしている。

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