2024.10/14
当クラブで、フェンシングを楽しんでいる利用者の声をお届けします。今回は女性フェンサーの藤村ナーベッキー朱音(あかね)さんです。藤村さんは2024年5月、第77回都民体育大会春季大会の女子エペ個人で“優勝”するなど、好成績をおさめられました。勢いに乗っている藤村さんに、フェンシングの魅力について伺います。
先日の都民大会では、女子エペ個人で優勝、女子サーブル個人で4位の結果でした。率直に言って、自分でも信じられない気持ちです。
試合ではMNHフェンシングクラブの会員のみなさんに応援いただき、本当に嬉しかったです。その半面、想像以上の熱い声援に「これは期待に応えないといけない」と身が引き締まる想いでした。この場を借りて御礼申し上げます。
実は、昨年の大会の時期にちょうど怪我をしてしまっていたため、結果も出せず、その悔しさを引きずっていました。今回は万全の体調で良い結果も残せたので、「ああ、復帰できたな」という安堵とともに、大きな達成感を得ることができました。
フェンシングとの出会いは子どもの頃にさかのぼります。
架空の世界で勇者たちが戦うファンタジー映画・『ロード・オブ・ザ・リング』。その剣技シーンに憧れたのが始まりでした。
また、小説『シャーロック・ホームズシリーズ』でも、スポーツ万能なホームズがフェンシングをたしなむ場面があり、興味津々だったのです。
実は大学時代の選択授業でフェンシング少しやっていたこともあり、漠然と「フェンシングをやって、かっこいい女性になりたい」という想いを抱いていました。
社会人になり、外資系のコンサルティング会社でコンサルタントとして働くこと、約6年。コロナ禍でリモートワークを余儀なくされ、運動不足を感じるようになりました。
「なにか身体を動かしたい」と思ったところ、昔の想いが再燃し、このクラブの体験会へ足を運んだのです。
入会の決め手は、フルーレ・エペ・サーブルの全種目ができること。大学で一時やっていたものの、どの種目が自分に合うのかが、まだ全然分かっていなかったのです。
また、続けられるかどうかを見極めてから道具の購入をしたかったので、道具のレンタルができる(スモールスタートができる)のも、ありがたかったですね。
女性限定の大人教室に入ってみると、コーチの感じがとても良く、優しく丁寧に教えてくださいました。「まずはやってみましょう」と、実践的な面が多かったのも肌に合っていましたね。他の生徒さんたちも皆ウェルカムモードで、すぐに打ち解けることができました。
最初はエペのクラスに入ったものの、「突き」に加えて「斬り」の攻撃ができるサーブルのかっこよさにも憧れていたので、途中からサーブルもやり始めました。レッスンや練習会に参加するなど、ちょっと背伸びをしていたんです(笑)。
一方で、1種目に絞っていなかったことが、自分にとってとても良かったのかな、とも感じているんです。
というのも、先の優勝した試合でのこと。
決勝戦の相手方のコーチが、試合中に私のフェンサー仲間のところへきて、「あの選手はエペだけをやってきた訳ではないですよね?」と確認されたそうなのです。
自分では気付かなかったのですが、複数の種目に取り組むことで、技術にも幅が出て力になっていたのかな…と。
そもそもこのクラブは、所属していない人でも飛び入りで練習会に参加することができます。他のクラブと比べても、普段やっていない人と対戦する機会を比較的多く持てる気がします。やはりこのクラブを選んで良かったな、と思いましたね。
フェンシングの魅力はいろいろあるのですが、端的に言えば「ストレス発散」。
これはもう、本当に大きいです(笑)。
そもそも本気で相手を斬りにいったり突きにいったりできるものって、なかなかないですよね。仕事で嫌な事があっても、一旦切り上げてフェンシングをしに行って、思い切り発散して帰って来る。すると、新たな気持ちで仕事に向き合えることも多いんですよ。
「男性と対等に戦えるチャンス」があるのも、おもしろいと思います。
スピードと反射神経がものをいうサーブルでは少し難しいものの、例えばエペやフルーレなど駆け引きが長く続くような種目では、到底勝てそうにないような男性相手に、私自身勝ってしまったことが、過去に何度もありました。個人的にはそれも「快感」ですね(笑)。
一生を通じての健康維持という観点でも、適したスポーツではないでしょうか。
参加している方々の年齢も幅広いですし、ご高齢の方も年を感じさせない動きで若い方と対戦されています。傍から見ていて「こんなふうにいくつになっても続けて、健康でいられたらいいな」と感じますし、お話していても本当にシャープな方が多いんです。
また、特にエペの場合は、身体と頭を「両方」使います。
自分がどういう動きをすると相手がどう動くか…といった駆け引きをずっと考えながら身体も動かしているので、頭からつま先までの全身の健康に、とても良いと思います。
練習中は心臓が脈打つほどの有酸素運動ではあるのですが、ずっと続けてきたお陰で心肺機能が強化されたように思えます。最近はちょっと走っただけでは、それほど息が上がらなくなりました。ハイキングなどをしても「体力が随分ついたな」と実感しています。もちろんダイエットにもいいですよ。
意外なところでいえば、「動体視力の向上」ですかね。
私事ですが、旅行中にシャワーを浴びていたところ、シャワーヘッドが突然落下してきて。それを見事にキャッチできたんです。すごくないですか(笑)?
最近、とある自主制作映画に「フェンサー役」で出演しました。フェンシングを通じて世界が広がったり、フェンシングに興味を持ってくれる人とつながったりできて、とても嬉しいですね。以前より私が生き生きしてるようで、夫も喜んでくれています。
そんな良いことずくめのフェンシングですが、あえて大変な部分を言うと、道具の手入れには気を使います。たくさん汗をかくスポーツなので、手入れを怠ると錆びることもあり得ます。また、道具はけっこう重いですね。
そういえば、6月の世界ベテラン選手権大会(*)で、当クラブ・代表の菅さんが優勝されました。「自分もいずれは出場をしてみたいな」と希望が湧いてきます。ずっと先になるとは思いますが、大きな目標として掲げていきたいと思っています。
これを読んで興味を持った方にお伝えしたいのは、まずはあまり構えずに気軽に始めてみたら良いのでは、と。お伝えしたように、健康維持やストレス発散の方法としても、最適なスポーツだと思うので、お勧めしたいですね。
また、もともとが騎士の剣技だったため「高貴な人がやるスポーツなのでは?」と構える方もいますが、実際やってみると、むしろ逆。私のように、スポーツをやってこなかった人でも、大人になってからでも問題なく取り組める、気軽なスポーツだと強調したいですね。
女性のフェンサーはまだ少ないですし、個人的にはもっと女性の方々と一緒に練習や試合ををしたいな、と渇望しているところです。
何はともあれ、練習中は和気あいあいとした雰囲気で、年齢もバックグランドもばらばらの人が集まる多様性のあるクラブ。だからどんな方でも楽しめるかな、と思います。
ご興味を持たれた方は、ぜひご一緒にフェンシングをやりましょう!
(*)2024年6月30日に開催された、2024世界ベテラン選手権大会代表選手 第3回選考会(最終)にて、MNHフェンシングクラブ代表の菅 喜嗣が優勝した。日本予選総合2位で10月のドバイ本戦出場決定となった。