2024.08/05
MNHフェンシングクラブでフルーレ・エペのコーチを務める、菅野慶嗣(かんの・けいし)コーチ。
当クラブの前身・東京ガーデンフェンシングクラブの時代から変遷を見守ってきました。
「ユニフォームを着てマスクをつけると別人のように戦いに集中できる」という菅野コーチが、さまざまな角度からフェンシングの魅力をお伝えします。
MNHフェンシングクラブは、最近になってずいぶん雰囲気が変わったな、と思います。
6年前から、ここの前身「東京ガーデンフェンシングクラブ」でコーチをやっています。
当初は、練習会というと1対1で練習する感じだったのですが、今は10数人で集まってわいわいと試合をして、とても賑やかなんです。また、ここ数年でフェンシングの認知度もぐっと上がってきましたよね。
先の東京オリンピックでの金メダル(*)や、MNH側の地道なイベント活動が奏功しているのかな、と思います。フェンシング仲間からも「MNHといえば、調布にあるクラブさんだよね」などと言ってもらえるようになりました。そんな変化がとても嬉しいですね。
現在僕は、主に1対1の個人レッスンや、練習会でのアドバイスなどを担当しています。下は中学生から上は70代まで、幅広くいらっしゃいます。
MNHフェンシングクラブは、競技性はもちろん、「楽しむ」要素もしっかりあるのが魅力だと思います。
実際にここに来ると、その和やかな雰囲気を感じてもらえると思います。
まず、コーチはみんな明るくて、お互い仲がいい。
そもそもフェンシングは他のスポーツに比べてまだ小さい業界なので、顔見知りが多いんです。
例えば大久秀コーチなども昔から強い選手として知られていて、僕自身も憧れていました(笑)。自分もこのクラブのコーチの紹介で入りましたし、友人にも紹介しました。そんなふうに風通しの良さがベースにありますね。
教える際に気を付けているのは、あまりあれこれ詰め込み過ぎないこと。
シンプルに要点を伝えるよう、気を付けています。
また、できるだけイメージしやすい例えをするよう、努めています。
ほんの一例ですが、同じところばかり突きにいくお子さんがいました。野球もやっている子だったので「ピッチャーがずっと同じストレート・同じカーブを投げ続けていたら相手に打たれるよね? フェンシングもそれと同じで少しずつ変化させないと、勝つのは難しいよ」とアドバイス。
すると「確かにそうだね!」と笑ってくれました。
そのように感覚的に分かってもらえたらいいな、と。
実感が伴った方が楽しいし、やる気になりますからね。
一方、高校生くらいになると、やはり多くは「勝ち」にこだわり始める。そうすると、勝ちたい想いが強すぎてスピードで勝負しようとしたり、短時間で相手をやりこめようとしたりする傾向が出てくるのですが、ちょっと待て待て、と。
やはり相手がいるスポーツなので、「駆け引きを楽しむ」という姿勢を忘れないで欲しいのです。「初心にかえる」とでもいいましょうか。結果的にそれも含めて楽しむことが、強くなれる秘訣かな、と思っています。
それと、大人の方は、頭で理解できないと身体が動かない人も多いようです。1回お話をして「なるほど!」と納得をした上で、実際に動いてみて、できないところをまた刷り合わせる。そんな風に会話のキャッチボールをしながら進めています。
練習では、生徒さんと何気ない雑談を交わすこともあります。
「明日休み?何するの?」「フェンシング以外に何が好きなの?」などと、僕からも声をかけています。
最近では、クラブ会員の方からご趣味の歌舞伎の話を伺って、パンフレットをいただきました(笑)。僕の視野も広がりますね。
そもそも、ここまで多世代の人が一堂に会して取り組んでいるスポーツって、なかなかないですよね。
たいがいのスポーツは、60代が多い、学生が中心、などと偏りがあると思うのですが、ここでは小学生から70代までが1つのコミュニティの中で、垣根なくおしゃべりや練習をしています。
小さいお子さんにとっては「今日はおじいちゃんを倒すぞ!」といった経験もできるし、逆にご高齢の方にとっては自分の孫ほどの年代の子と対等に戦えます。
ですので、いろいろな世代がいるちょっと違ったコミュニティとして、ぜひ当クラブを活用していただけたらな、と思います。実際、ここにいらっしゃるシニアの方は、とても生き生きしていますよ。
人生100年時代、ある程度の年齢に達すると、体力の低下は抗えません。
その点、フェンシングの良さは頭脳戦の側面もかね備えていることです。つまり自分が動ける範囲で、思考を巡らして相手から点をとることも可能。
だから、いくつになっても楽しめるスポーツなのかな、と思っています。
(*)2021年に開催された東京オリンピック2020で、男子エペ団体戦で金メダルを獲得
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