2024.03/12
今まで、スポーツをやってきて本当に良かったな、と思っています。
まず、普段の生活では味わえないような「試合での緊張感」。
特に、数々の大試合で培った精神力は、学校教育では学ぶことはできなかったでしょう。
また、意外なところで言うと、「礼儀」ですかね。
クラブの練習や部活動は、まず挨拶からはじまります。
挨拶はそもそも、自分の心が開いていることを伝え、目の前にいる相手を認めること。
そう、人間関係の基本なんですよ。
これらは、大人になった今、さまざまな場面で役に立っていると実感しますね。
もちろん教える際にも、とても大切にしています。
生徒さんを見ていて印象的なのは、やはり勝った時の笑顔です。
勝ったらみんなニコニコする。
だから、誰でもいいので「目標の人を作って勝てるようにがんばって欲しい」というのが率直な想いなんです。
また、自分の作戦が決まった時は、本当に楽しい瞬間だと思います。
フェンシングは「頭脳戦」ともいわれます。
簡単にいえば、相手の裏をかく作戦を立てるわけです。
例えば、自分よりスピードがずっと速い相手だった場合、まともに勝負しても勝ち目がないですよね。
そこで作戦を練るのです。
ただ、いきなりネタバレでいくと、相手にやりこめられてしまうことも。
そこで駆け引きをするわけです(これはほんの一例です)。
そうはいっても、最初はみんな駆け引きどころじゃないと思います。
それはそれで、当たり前。いいんです。
なので、最初の目標は「1点取ること」。
この1点取る中にもいろいろな要素がありますよ。
試合後に相手の動きを冷静に振り返ってみる。
自分の強みをコーチと一緒に考えてもいいかもしれません。
実際、その人によってフェンシングのスタイルは全然違ってきます。
そして、次の試合でひとつでも試してみる…
そんな日々の小さなチャレンジが、楽しいんですよね。
一方、「ただ趣味で楽しみたいんです」という方も多くいらっしゃいます。
それはそれで、まったく構わないと思います。
実際、普段の練習では「試合で勝ちたい人」「趣味で単純に楽しみたい人」の両方を視野にいれたカリキュラムになっています。
ちなみに、大会で勝ちたい子には勝つコツを身に着けてもらう選択肢も用意しています。
「選手コース」や「個人レッスン」などがそうですね。
一方で、いろいろなご要望を聞いていると、フェンシングがいかに幅広い年代層に向いているスポーツかということを、実感しますね。
みなさんは、70代以上の方でも参加できる世界選手権(*)をご存知でしょうか?
日本ではフェンシングを始める高齢の方が増えています。
実際に、84歳くらいの方でもフェンシングを楽しんでいる人がいるんですよ。
歳を重ねると、どうしても体力は低下してきます。
その点、フェンシングは、体力やスピードで勝てない分、別の戦略を頭で考えられます。
僕も、たまに高齢者の方の試合を見ることがありますが、その頭脳戦のレベルの高さに驚きますね。
そんなふうに、各年代ごとに楽しみ方が変わってくる。いくつになっても楽しめる。
これもフェンシングの大きな魅力でしょう。
(*)公益社団法人日本フェンシング協会が主催する世界ベテラン選手権選では、年齢区分を50歳~59歳、60歳~69歳、70歳以上の3種としている。